「祖父母が同居している」
これは、かつての日本で普通に見られた光景ですが、今、オーストラリアで、静かに広がっているそうです。
日本の田舎で育った私が小さいときは、祖父母と両親、私達子どもがひとつ屋根の下に住んでいました。
そのあと、核家族という言葉ができて、両親と子どもだけの形態が多くなりましたが、
私は、そういう、両親と子どもだけの家庭がうらやましかったです。
うちの母は「嫁」という立場で、父が珍しく子どもたちを一泊旅行に連れていってくれたときも、母は祖父母と留守番でした。
嫁と姑の関係もストレスでした。
オーストラリアでも、mother-in-law(義理の母親)という言葉には独特の意味合いがあります。
この写真の植物は mother-in-law’s tongueと呼ばれています。これは葉の縁が鋭いからですね。日本ではサンセベリアというようです。
でも、親と同居しないのが普通のオーストラリアでは、これまで日本ほどの問題はなかったことでしょう。
家によっては、裏庭に Granny flat (おばあちゃんのアパート)があることもありましたが、一般的ではありませんでした。
昔は15歳で独立したが
私が40年以上前に、シドニーに行ったときは、「オーストラリアでは15歳になったら独立するのが普通だ」と友だちが教えてくれました。
今も大学の進学率は日本ほど高くないと思いますが、その頃は、義務教育が終わる15歳になると、学校をやめて、職人をめざしてApprentice (見習い、徒弟)になる若者が多かったのでしょう。
ハイスクールの卒業まで家にいたとしても大学に行くときは、都市にあった大学のそばに住む学生が多かったのです。
私はここ5年ほどオーストラリアを留守にしていましたが、10年くらい前に言われだしたのが、おとなになった子どもが家から出ていかない、住まいを見つけて出ていっても、また戻ってくる、という話です。
子どもから離れたかったら、親のほうがアパートを見つけて出ていくしかないという笑い話のようなことも聞きました。
家賃が高すぎるとか、親があれこれしてくれる家のほうが住み心地がいいとか、です。
そして、さらに新たな現象です。
数日前の新聞を読んでいると、Multigeneration dwelling が増えていると書いてあります。
Multigeneration dwelling (複数世代住宅)とは
これは要するに、日本で二世代住宅と呼ばれているものです。
祖父母世代、親世代、子世代が同じ家に住むわけです。
新聞には妻の母が一緒に住んでいる例があげてありました。
これが増えた背景は、平均寿命ののびによる高齢者の増加、高齢者施設の不足などがあるでしょうが、
移民の多いオーストラリアなので、親世代との同居が普通であったアジアやアフリカからの移民の影響もあるのではと思います。
こうなると、かえって現在の日本社会のほうが徹底した核家族社会かもしれません。
自分たちにあった暮らし方がいちばん!
ともかく、どんなふうに暮らすにせよ、家族のそれぞれが負担にならない、精神的につらくない住み方をしたいものです。
自分の子供のころの経験や、父母の兄弟の暮らし方とかを見て、私は二世代住宅はやめたほうがよいと今も思っています。
特に玄関が一緒でお互いの気配がわかるように家は、やめたほうがいいと思いました。世代間の行き来が活発でなかったら、よけいに寂しいです。
うちの親は結局、子どもが都会の大学に行ったり都会で就職したりしたあと、ふたりだけになりました。
今の田舎でよくあるパターンです。
母は「こんなはずじゃなかったのに」と何回か言っていましたが、私は冷たく、「だって自分たちが、そういうふうに、し向けたからでしょ」と応えてました。
自分が努力しないでも子どもたちがなんとかしてくれるってのは甘すぎです!よね?
今の私は、ラッキーなことに、おとなになった子ども3人と一緒に暮らしています。
日本にいた間は、母と2年足らず住んだ以外はひとりだったので、
家に誰かがいるのはほんとにありがたいです。
この私たちの形態は Multigeneration dwelling というような大層なものではなく、実の親と子が一緒にいるだけです。
ここで思い出しました!
母と私も実の親子が一緒にいただけでしたが、あれは私が精神的に大変でした!
最終的には、施設に助けていただきました。
今の私たちの状況とどう違うのか、
あの母との状況をどうやったら繰り返さなくてすむのか、
どうやったら子どもたちにあの状況を味わわせなくてすむのか、
これが今後の私の課題ですね。